1時間で民法がわかった!皆が勉強する基本中の基本16項《総則・物権法編》【行政書士・法律資格用】
INDEX
3)民法の物権法の特徴
民法の物権法の特徴《目次》
- 1)物権の性質達
- 2)物権変動が重要すぎる件
- 3)【物権変動】物権の対抗要件って?
- 4)所有権について
- 5)占有権について
- 6)用益物権について
◇物権の性質達
民法上の物権の性質といえば・・下記のようなものが重要です。
この性質を読むと民法がどれだけ物権という権利を優遇しているかイメージを持てるようになります。
民法の物権の3つの性質
- 直接性
- 絶対性
- 排他性
⇒物権の権利者と物との間に第三者が割り込むことができないという性質です。
それだけ物件は強力な支配力があるということですね。
⇒物権の権利者は、誰に対しても物権を行使できるというイメージです。
例えば、土地の所有権を持っている人は、その土地の権利者であることを誰にでも主張できますよね?
イメージが持ちにくい場合、債権と比較すると非常にわかりやすいです。
例えば、ある契約に基づいて、Aさんが債権者、Bさんが債務者となったとします。(AさんはBさんに代金を請求する債権をもっていると考えましょう)
この場合、AさんはBさんに対して代金を請求する権利があることになりますが、この権利はBさんだけにしか主張できません。
ここに、第三者のCさんがいたとしますが、この代金債権をBさん以外のCさんに主張することはできません。
これが、債権の相対性です。
物件の絶対性と対比される民法の基本知識です。
⇒ある物にひとつの物権が成立しているとして、ここにはもう物権は成立できないという性質です。
例えば、1つの土地に一個の所有権が成立しているとして、原則ここにはもう1つの所有権は成立しえません。
これに対して、債権などは、1人の債務者にいくつでも債権が成立します。
民法を勉強していれば自然と頭に入る概念ですので、初めの内は、物権の『強さ』をイメージできれば十分です。
『あぁ、物権て最強なんだなぁ~』との印象を持って頂ければここでの説明はひとまず成功です。
この性質が最も問題になるのは、賃借権との比較の時です。
◇物権変動が重要すぎる件
物権変動とは?
物権の無敵度合いはイメージをもっていただけたでしょうか。
さて、上記の性質は、常識にすべき知識ですが、それにも増して民法上重要すぎる分野が『物権変動』です。
判例もいくつも出ているところです。
物権変動とは、物権の発生・変更・消滅のことをいいます。
民法上の物権変動の項では、いくつか重要なところがあるのですが、最も重要なのが『契約による物権変動』です。
大きくは不動産(ex:家・土地)と動産(ex:カメラ・車)に分かれます
勉強を始めて間もない内に、是非知っておくべき知識としては、契約によって物権を移転する場合に、1)いつ2)何によって移転するのか?です。
そして、後述しますが、この物権の移転を第三者に主張するためには3)どういう要件が必要なのか?
この3点です。
- 1)いつ?移転するか
- 2)何によって?移転するか
- 3)第三者に主張するための要件
ここでは、1)2)について書いてみます。
物件はいつ?何によって移転するのか?
内容自体は簡単ですが、一般的な社会常識からすると『え?それ本当?』という違和感ある内容なので、とっつきにくい人が多いですね。
まず、物権を契約によって移転する場合は、契約交わすことになりますね?
例えば、家を売買する時を想像してみてください。
売買契約を結び、これを譲渡する内容の合意をします。
そして家の所有権(物権)はというと1)いつ2)何によって移るのでしょうか?
驚くことに、『家を譲ります』という意思表示(自分の意思を相手に伝える)と同時に、家の所有権は相手に移るのです。
つまり、1)意思表示の時点で、2)意思表示をすることで、所有権は移転します。
そう考えられる根拠は?
これは176条という条文が直接の根拠になります。
判例もこの見解で良いよと言っています。
つまり、今の民法では、上記の例でいうと意思表示がされれば、家の所有権は代金も何も払わず相手に移るということなのです。
一般常識から考えるとちょっと『??』ですよね?
でもこれが今の民法の通説的見解で、所有権(物権)は原則として意思表示と同時に移転すると考えられています。
ここは本当に重要な知識ですので、絶対に民法を本格的に学ぶ前に常識にしておくべき内容です。
では、移転したとして、その物権の移転を、譲り受けた人が、第三者に主張するためにはどのような要件を備える必要があるのでしょうか?
上の3)についての話に移ります。ここは死ぬほど重要なので、項目を変えます。
◇【物権変動】物権の対抗要件って?
対抗要件と、対抗関係が生じる典型事例
契約によって物権が移転するためには、意思表示のみあれば良いとのことでした。
では、この移転を第三者に主張するには何が必要でしょうか?
ここで物権を第三者に主張することは、民法では『物権を第三者に対抗する』といわれます。
意思表示のみによって物権が移転するのですから、物権が同人複数の人に譲り渡される事態が生じます。
例えば、ある家の所有権が、Aさんによって、BさんとCさんに譲渡されてしまう事態が生じてもおかしくないということです。
ちなみに、これ他人物売買といって、民法ではよしとされています。
下記の図をご覧ください。
このようなケースを、民法では二重譲渡といいます。
死んでも忘れてはいけない二重譲渡のケース
このケースは、民法を勉強する人は、死んでも忘れてはいけません。
寝ても覚めても覚えておかなくてはいけないほど、重要なケースです。
違和感があるかもしれませんが、とにかく、こういう形で所有権(物権)を二重に譲り渡すことができるのです。
この場合、BさんとCさんどちらが完璧な所有権(物権)を取得することができるのか?という一大論点があります。
二重譲渡のケースでは何を基準に所有者を決めるの?
二重譲渡のようなケースを民法では対抗関係と呼びます。
このような場合は、所有権を無事取得したい人は、177条によって、不動産の『登記』が必要になります。
例えば、上の図でいうと、BがCに対して『自分が無事所有権を譲り受けた者だよ』と主張するには、BがCより先に、『登記』をしなければダメということです。
登記をはじめとする対抗要件とは、第三者に権利を主張するための条件のようなイメージを持っておけばよいでしょう。
法務局の登記簿を閲覧すれば『Bがこの家の権利者ですよ』と皆に分かるような形で示さなければならないということです。
これは不動産の譲渡についての対抗要件です。
同じような話が『動産』にもある!
動産(ex:カメラ、車、時計等)の場合は、引渡しが対抗要件になります。
つまり、AさんがBさんとCさんの2人にカメラを二重譲渡した場合をイメージしましょう。
BさんがCさんにそのカメラの所有権(物権)を主張し、自分の権利を主張するためには、Aさんから現実にカメラを受け取らなければならないということです。
これが、民法の対抗要件主義の説明です。
この考え方は、民法のいろいろな論点を解決する考え方として、何度も何度も出てきます。
この二重譲渡と対抗要件の考え方をしっかり頭に叩き込んでいないと、民法の多くの部分で理解ができなくなります。
いろいろなところで、この考え方が登場しますから、絶対に二重譲渡のケースだけは頭に叩きこまなければなりません。
◇所有権について
これは、物権でも代表的な権利です。
その物を所有する権利です。
この権利は、一般常識になっているといえます。
民法では、この所有権に基づく請求権がいくつかありますが、これは本格的に勉強し始めてから学ぶべきことですので、ここでは割愛します。
◇占有権について
占有権は、物を実際に支配することによって生じる物権です。
例えば、他人の車を借りて、運転すれば、それだけで借りた人に占有権が生じます。
民法上は、この占有権に基づいていくつか請求権が発生するケースがありますが、これも民法を勉強する中で学びますので、基本を語るこの記事では割愛します。
今の段階では、『まぁ、物を占有(現実に支配する)すれば生じる権利なんだな』程度で十分です。
◇用益物権について
地上権が代表的です。
イメージとしては、土地を利用させてもらう権利というので十分です。
債権である賃借権とは違い、物件ですから誰に対しても主張できます。
法的に発生するものが多く、特に契約がなくても発生することが多いです。
多くは、賃借権との対比で出てくることが多いですが、圧倒的に賃借権の方が大切です。
ここまでのまとめ
いや~もっとあっさり書きたかったところですが・・・。
民法は各分野が1科目にもなるといってもいいほど分量のある法律です。
また、非常に重要な法律でもありますので、基本中の基本の原理原則でも、このくらいの分量になってしまいます。
でも、ここで書いたことは基本中の基本で、法律系資格を取得しようと考える人であればほぼ常識レベルの知識です。
そうは言っても、『難しいな~』と思ってみても、慣れればすぐに頭に入る知識ですから、ノープロブレムです。
ざっとイメージを持つための、民法の勉強にスムーズに取り掛かるための足がかりにご利用ください。
では、次は債権法へ。