1時間で民法がわかった!皆が勉強する基本中の基本31項《債権法編》【行政書士・法律資格用】
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(2)債権法の特徴《各論編》
ここまでは、債権総論のエッセンスを凝縮した内容を書いてきました。
さて、ここからは債権各論の話に移ります。
ここまでで、よく『契約に基づく債権の発生』という表現を用いていました。
債権各論では、民法上の契約にはどういうものがあるか?について勉強することになります。
総論では、民法の債権に関する概説がなされ、各論では、民法で規定された典型的な契約が列挙されています。
民法上の契約は、14種類の典型契約があります。
これに対して、民法上に規定のない契約を、非典型契約といいます。
それでは、下記で一覧してみましょう。
民法上の典型契約と非典型契約
- 1)贈与
- 2)売買
- 3)買い戻し・再売買の予約
- 4)交換
- 5)消費貸借
- 6)使用貸借
- 7)賃貸借
- 8)雇用
- 9)請負
- 10)委任
- 11)寄託
- 12)組合
- 13)終身定期金
- 14)和解
- 15)譲渡担保(代表的な非典型契約)
1)贈与
贈与契約は、一般的にもよく使われる言葉ですよね。
親が子に、家や金銭を無償で譲り渡すような場合が代表例です。
特に難しい契約ではありません。
2)売買
この契約は非常に重要です。
契約自体は単純なのですが、民法全体を通して、登場します。
売買契約がどのようなものか?については、スーパーに買い物に行くような場合や、インターネットで商品を購入するような状況を想像してもらえれば分かりやすいでしょう。
3)買い戻し・再売買の予約
ほぼ出ません。
例えば、売買契約で相手に家を譲渡し、一定の条件で、後日買い戻す特約をしているような契約です。
主に担保として用いられることの多い契約です。
僕もほとんど目にしたことのない契約で『こういう契約なんだ』くらいしか知識はありません。
4)交換
読んで字のごとく、物物交換の契約です。
この契約も資格試験との関係では、ほとんど出題されているところを見たことがありません。
5)消費貸借
『しょうひたいしゃく』契約です。
代表的な具体例は、借金です。
つまり、消費者金融から、100万円を借りるような契約です。
意外ですが、原則、無償で契約を結び、何の特約もなしに利息を請求することはできません。
利息等の利益が発生する部分は別途特約(契約)を結ぶ事になります。
この知識は頻出で、一般的なイメージとは違う点です。
この契約は、次の項目で説明する使用貸借と区別されます。
使用貸借との大きな違いは、借りたものを一旦『消費』してしまうことにあります。
つまり、消費貸借は、100万円を全て使い切ってしまい、完全に同じものを返却するのではなくて、同種の全く別のものを返却すれば良い契約です。
ここは使用貸借との大きな違いです。
6)使用貸借
消費貸借とよく似た契約です。
代表的なのは、友達にゲームを借りるような場合です。
某レンタルショップなどでDVDを借りる契約は厳密には賃貸借になりますので、使用貸借ではありません。
使用貸借は、原則無料で、賃料が発生する契約は、賃貸借契約だからです。
ただで貸すよ・借りるよという場合が使用貸借契約です。
ちなみに消費貸借との大きな違いは、使用貸借で借りたものは、そのまま全く同じものを返さなくてはいけないという点です。
上記の具体例で言うと、友達に借りたゲームは、それをそっくりそのまま返さなければならないということになります。
7)賃貸借
非常に重要な契約です。
ここは売買と並んで各論の中でも頻出かつ民法の理解に欠かせない契約です。
賃貸借契約の代表例は、マンションを借りるような場合ですので、特にイメージが難しいという契約ではありません。
この契約は、特に所有権との比較が重要テーマになります。
8)雇用
ほとんどでません。
正社員をイメージしてみましょう。
9)請負
売買契約や賃貸借契約よりは重要度が下がりますが、請負契約は重要です。
いくつも判例があるところで、債権総論の原則がかなり修正される契約ですので、意外に混乱しやすいです。
請負契約はこれまでの契約と比較して、あまり一般的ではないため聞きなれない人も多いと思います。
建築関連の業界の方であればイメージできると思いますが、それ以外の業界の方はイメージしにくい契約かもしれません。
代表的な例としては、ある会社が、マンションの建設を計画していたとします。
しかし、自社では施工能力(マンションを建てる能力)がないため、施工能力をもった建築会社へマンションの建築を注文したとします。
このような場合、未だマンションは完成していませんから、売買契約ではなく、通常請負契約を結ぶ事になります。
つまり、『マンションを完成させてね』という注文を請負人に対してするわけです。
このような契約が請負契約です。
これに対して、すでに完成している中古のマンションを販売するという場合は、売買契約を結ぶ事になります。
請負契約の特徴としては、非常に厳しい契約であるということです。
というのも、債権総論では原則でだった債権者・債務者の責任バランスが、請負契約においては、請負人の責任を増す形で修正されています。
請負人の責任は重いのだという姿勢で勉強すると、結構すんなり理解できますので、是非覚えておきましょう。
10)委任
重要度は中ランクです。
どのような契約か?そのような規定があるか?覚えるだけです。
委任契約の代表例は、代理をお願いするような契約がほとんどです。
例えば、弁護士に裁判をしてもらうような契約は委任契約の典型例です。
つまり、第三者に自分が処理するはずの事務を依頼して代わりに処理してもらうような契約をイメージするとわかりやすいと思います。
11)寄託
あまり馴染みのない契約ではないでしょうか?
寄託(きたく)契約といいます。
簡単にいうと、他人に物などの保管をお願いする契約です。
一番分かりやすい代表的な例は、旅行先の駅などで、荷物の預かり所のようなサービスです。
サービスを利用し、荷物を預かってもらうような契約が寄託契約の代表例です。
委任の特徴をベースに期待されていますので、委任と比較すると特徴がはっきりします。
12)組合
ほとんど出ませんね。
会社のようなイメージです。
皆で集まって、何かひとつの目的に向かって頑張ろう的な契約です。
組合では財産関係についての判例をいくつか抑え、どういう契約であるかイメージできればある程度はクリアしたことになります。
13)終身定期金
僕は、ちらっと見たことがある程度の契約です。
イメージとしては、年金のようなものです。
14)和解
これもほとんど出ません。
民事訴訟法などでは一大テーマになる和解契約ですが、民法では、ほとんど勉強する機会はないと思います。
15)譲渡担保(代表的な非典型契約)
非典型担保とは、民法上に規定のない契約の形です。
代表的なものは譲渡担保と呼ばれる契約があり、慣習として利用されている契約です。
詳しくは担保の分野で勉強することになりますが、ここでも簡単に書いてみます。
譲渡担保は、ある債権を担保するために、自分の持っている価値のある物を相手に譲渡するような場合です。
あくまで担保として差し入れられるものですので、この債権の履行が行われれば、譲渡した物は、返却されれることになります。
なかなかイメージしにくい契約ですが、勉強初期段階では、『あぁ担保なんだな』程度の理解で問題ありません。
(3)まとめ
ふぅ・・・・。
非常に長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございます。
かなり削ったのですが、やはり債権法を概説するのは大変でした。
通常、テキストや専門書等では、400ページ以上で解説される内容なので、本当にエッセンス中のエッセンスのみの説明になっております。
ただ、内容としては、僕がこれまで勉強してみて混乱した点を踏まえ、民法をスムーズに攻略するためにはどのような点をまずは理解しておくべきなのか?という視点でまとめてあります。
民法を勉強する前にザッと1~3回程読み返してもらえれば、かなり民法の勉強が楽になる内容に仕上げています。
(まぁ無駄な記述もありますが、わかりやすくするためどうしてもボリュームが大きくなることはご容赦ください)
是非、活用頂ければ幸いです。
ちなみに、債権法の分野では、他に不法行為等の契約に基づかいない債権の発生原因があります。
ただ、ここは独立して非常に重要な分野ですので、分離しパート3で一緒にて書いていくことにしました。
それでは、今回はこのあたりで。