時間をかけない商法・会社法対策!とにかくマスターすべき基本中の基本!

公開日: : 最終更新日:2014/06/13 Ⅰ:資格全般, 法律系科目対策, 行政書士資格 ,

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《じっくり読んだときの読了時間》: 2118

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 法律資格では試験科目として勉強することが求められることの多い商法・会社法。

 行政書士試験では、民法・憲法・行政法などの法律に比べて、商法・会社法のウエイトはそう高くありません。

 であれば、行政書士試験の対策としては、商法・会社法をマスターするための勉強時間をできるだけ省きたいと思うのが人情です。

 勉強時間を節約ができれば、その分他の科目に時間を費やすこともできますし、思い切って気分転換(遊ぶ)することもできます。

 法律科目には、それぞれ科目間で、考え方に共通点もありますが、その科目独特の考え方を勉強し直さなければならないこともあります。
 
 もちろん、商法・会社法にもこの法律独自の考え方の特徴があります。

 ここを意識すると、商法・会社法をマスターしやすくなります。

 この記事では、商法・会社法を最短でマスターするため、基本中の基本(概要・特徴)をまとめてみました。
 
 これを読んで、ライバルに差をつけてやりましょう。

 2014年 5月29日 更新しました!
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INDEX

商法・会社法の基本中の基本を知るとマスターが早くなる

 
 新しく法律科目を勉強する場合、効率的に勉強をすすめるコツは、その法律独特の考え方の基本をさっさとマスターしてしまうことです。
 
 商法・会社法についても、この法則は変わりありません。

 商法・会社法独自の考え方や、基本原則からの大きな視点を持つことで、条文・判例の知識や論点がすっきりマスターできてしまったりします。

 そして、商法・会社法の独自の考え方とからめて覚えると、一度勉強した法律の条文・判例・論点などの知識が忘れにくくなります。

 法律の勉強は、木を見ず森を見よと言われますが、まさにこの考え方が商法・会社法を最短でマスターする秘訣です。
  
 日々の勉強で少し意識するだけ。
 
 やらなきゃ損です。
 

商法・会社法ってどんな法律だろうか??(+α手形・小切手法)

●【目次】

  • 1)『私法』と『公法』って何?
  • 2)民法と商法の違いをイメージしよう!
  • 3)一般法と特別法について!
  • 4)一般法が適用されるか特別法が適用されるかは『認定』がすべて
  • 5)民法・商法とも違う『会社法』ってどんな法律?
  • 6)手形・小切手法ってどんな法律?

1)『私法』と『公法』って何?

 
 商法・会社法は、民法と同じ『私法(しほう)』と呼ばれる法律の仲間に属します。
 
 これと対局に位置するのが『公法(こうほう)』と呼ばれる憲法や行政法の、主に国の行為や組織について規律した法律です。
 
 民法・商法・会社法の属する私法という法律は、簡単にいうと、市民と市民とのトラブルを調整する法律です。
  
 例えば、Aさんが車をBさんより買いました。でもAさんはBさんにお金を払いません。
 
 このようなときには、私法である民法やが問題になります。

2)民法と商法の違いをイメージしよう!

  

 では、このAさんとBさんが、共に商売で車の売り買いをしたとしましょう。
 
 このようなときは、AさんもBさんも『商売』で売買をしていますので、お互いに『商人』ということになります。
  
 商人間の取引については、商法が適用されますから、このような取引で問題となるのは、民法ではなく『商法』なのです。

3)一般法と特別法について!

 

 同じ私法でも、民法は一般法といわれる全ての私法のベースとなる法律です。
  
 これに対して、商法は特別法といわれます。
 
 特別法とは、民法がベースとなる私法ですが、特別な権利関係(法律関係)については、民法に優先して適用される法律のことをいいます。
 
 法律の解釈は、まず特別法を探し、ここに規定がなければ、民法の条文に戻るという思考をしていきます。

4)一般法が適用されるか特別法が適用されるかは『認定』がすべて

 
 先の事例で、商売での取引でAとBを『商人』と認定しました。
 
 この『認定』があることで、先の事例の取引には、商法が適用されるということになるのです。
 
 ここの認定は民法が適用されるのか?商法が適用されるのか?大きな分岐点になりますから実は非常に重要な作業です。
 
 つまり、どちらの法律が適用されるのかを決定してしまう作業ですから、商人を認定するかどうかで、大きく法律の使い方が違ってきます。
 
 商人と認定⇒だから商法が適用される。
 
 これが法律の論理展開です。
 
 少し、難しいですが、ここを今のうちに常識にしていると後々楽ですよ。
 

5)民法・商法とも違う『会社法』ってどんな法律?

 では、会社法はどのような法律なのでしょうか?
 
 会社法は、読んで字のごとく会社(法人)に関してよくあるトラブルや手続きをまとめている法律といえます。
 
 ちょうど、憲法の統治の分野を思い出すとイメージしやすい法律です。
 
 会社という組織には、いろいろな役職につき権力を振るう人が登場します。

 憲法で勉強することになりますが、『権力は暴走するもの』なのです。
 
 だから、暴走しないように法律で権力を正しく行使するルールを決めました。
 
 これが会社法の最も基本的な部分です。
 
 つまり、会社法は、主に会社の各組織がもっている権力の種類と、それについての手続きを定めた法律ということになります。
 
 そして、この手続き違反があったとき、さぁどうしましょうか?と論点や判例の悩みが始まります。

 これが会社法という法律です。 

 商法や民法とは少し違うなぁという印象を持ってもらえれば今の段階では十分です。

6)手形・小切手法ってどんな法律?

 
 行政書士試験では、ここはあまり問われないと思われます。
 
 というのも、近年手形・小切手の実用性が低下していますから、だんだんとマイナーな法律になっているからです。
 
 ともあれ、行政書士試験でも、全く問われないとは言い切れないですから、軽く書いておきましょう。
 
 手形・小切手法というのは、お金の支払いを手形や小切手という現金の代用となる証券で行う場合を想定した法律です。
 
 そして、手形や小切手で支払いがされたとき、トラブルが起これば、これを解決するための基準になります。 
 
 この法律は、民法の『債権譲渡』の規定の特別法と言われています。
 
 民法では、債権は原則譲渡は認めてないけど、一定の要件を満たせば譲渡が可能でした。
  
 これに対して、手形・小切手法では、原則、権利の譲渡は認められています。
 
 つまり、民法とは原則と例外が逆だということです。

 具体的には、手形は他人に譲り渡すとき、民法の債権譲渡のように債務者への通知は必要でなく、手形の裏に署名捺印さへしてしまえば、簡単に手形を譲り渡すことができます。 

 これを手形の裏書といいます。
  
 そして、手形は、それを所持しているだけで、手形の所持人は権利者と推定されます。
 
 例えば、手形がA⇒B⇒Cと移転し、AB間の取引が無効になったとしても、手形を所持しているCは原則権利を行使し、Aに支払いを求めることができます。
  
 Aさんにとってはたまったもんじゃありませんが、これが手形という証券の性質です。
 
 このように、手形は原則譲り渡すことのできる証券なので、手形は転々流通(てんてんりゅうつう)する証券であると表現されます。

 この基本的な性質から、ほぼ全ての論点を説明していきます。
  
 手形・小切手法で登場する考え方は非常に難解です。
 
 完璧にマスターしようとすると、それこそ、さらに一科目多く法律を勉強するつもりでないと太刀打ちできません。
 

商法・会社法の具体的な基本原則を勉強していきましょう

●【目次】

  • 1)民法の知識があると理解が早い
  • 2)商法総則・商行為法はひとまずやんなくていい
  • 3)手形・小切手法はひとまずやんなくていい
  • 4)結局は会社法がメイン
  • 5)会社法を攻略するために知る特徴と考え方
  • ◇手続き法的な視点

  • 6)商法の対策は?
  • 1)民法の知識があると理解が早い
  •  商法・会社法は、民法の特別法という位置づけです。
     
     そのため、その考え方のベースは、民法そっくりだったりします。
     
     また、民法で登場する基本的な法律論や、信義則・権利濫用・取引の安全などの、ごくごく基本的な用語がわかっていないと、勉強が進まない場合も出てきます。
     
     できれば、民法を先に勉強し、基本的な法律論や用語をしっかりマスターした後、勉強を開始するとスムーズにマスターできます。
     

    2)商法総則・商行為法はひとまずやんなくていい

     商法はほとんど知識でOKですし、出てきたところだけ覚えればひとまず十分です。
     
     民法の特別法であるということ以外は、取り急ぎはじめの段階で学ぶべき基本原則はありません。

    3)手形・小切手法はひとまずやんなくていい

     先に書いたとおり手形・小切手法は、近年ではあまり重要ではなくなってきました。
     
     行政書士試験などでも出題頻度は高くはならないと想定できます。

     天下の司法試験などでも、昔はウエイトの高い法律だったそうですが、今ではあまり出題されなくなりました。

     手形・小切手法については、基本的に模試などで出てきた知識だけを、コツコツ覚えれば十分でしょう。

    4)結局会社法がメイン

     結局、対策という対策をしなければならないのは、商法・会社法・手形・小切手法の中では会社法くらいしか残りません。

     近年では、会社組織運営の現場でもコンプライアンス(法令遵守)が重視される動きが顕著になってきていますし、より一層会社運営の適性が求められる社会状況にあります。

     会社法の重要性は、今後高まる傾向にあると思います。

    5)会社法を攻略するために知る特徴と考え方

     さて、ここからからがメインです。

     会社法を勉強する上では、いくつかの視点(特徴・考え方・基本原則etc//)をマスターしておくと、全体的な勉強が非常に楽になります。

     会社法独自の特徴や視点・基本原則を、日々の勉強で意識することで、かなり理解が楽になります。

    ◇会社法で決められた手続きを守ることが大切

     民法と会社法を比較すると、決定的に違うところがあります。
     
     それは、権力を行使するための手続きが詳細に定められていること。

     このような特徴を『手続法的だ』と表現したりします。
     
     手続法とは、代表的なものでは、民事訴訟法や刑事訴訟法があります。
     
     この訴訟法は裁判のやり方(手続)を定めた法律です。
      
     行政書士試験の出題範囲でいうと、行政法が手続法に近いです。
     
     中でも、行政事件訴訟法・行政不服審査法などは、民事訴訟法の応用のような位置づけなので、既に勉強された方は、この分野のイメージを思い浮かべてみましょう。
      
     まだ勉強が進んでいない人なら、例えば、条件を一つ一つ積み上げていくイメージが、まさに手続法の考え方のイメージです。
     
     つまり、Aが満たされれば、その上にBが積み上がる感じです。

     例えば、株式会社の設立の手続きは?
     
     【定款の作成】⇒【株式発行事項の決定】⇒【株式引受の確定】⇒【機関の決定】⇒【株式引受人による出資の履行・会社財産の形成】⇒【株式会社実体の完成】⇒【登記】という過程を踏みます。

     これが株式会社が設立される手続きとなります。

     会社法の場合は、このような手続き過程のどれかが欠けた時に、さぁどうなるの?といった感じで論点が出てくることが多いです。

    ◇預け合いと見せ金という基本論点で手続き法の特徴を見ていこう

     例えば、上記の【株式引受人による出資の履行】の過程でよく問題になるのが、1:『預合い』と2:『見せ金』という論点です。

     これは設立手続きのうち『払込み(会社法34条2項)』という手続きが欠けるのではないか?という問題意識から出てくる論点です。

     1:預け合いという行為をしてしまうと、会社法965条で刑罰が課されますので、当然無効です。
     
     これに対して、2:見せ金はどうなのでしょうか?
     
     見せ金とは刑罰のある預け合いに似た『払込み』偽装手段をいいます。
     
     ちなみに、預け合いは、帳簿操作で払込が行われたように偽装することをいいます。
     
     これと比較して見せ金は、帳簿操作ではなく、客観的にみると一度『払込み』がなされているため、ややこしい話になります。
     
     つまり、客観的には、条文の『払込み』という手続きを経ているように見えるけれども、実際蓋を開けてみると、到底『払込み』という手続きを満たすとは言えないのではないか?
     
     このような悩みがあるため、論点となっています。
      
     さらに、この見せ金は会社法の条文ではっきりと禁止するとはされていません。 
     
     さぁどうするの?ってなことで論点になっています。

     これも、手続きが欠けるか欠けないかの話です。(条文解釈も混ざっているのでややこしくてすいません)

     ちなみに、見せ金は、『払込み』には当たらず、無効となります。

    設立手続きで『払込み』手続きが必要な理由

     まず、払込払込とふつうに書いていますが、これ何でしょうか?
     
     一般的に、会社を設立する時には、資本金というお金を一定量準備し、これを発起人が、銀行に預ける必要があります。
     
     昔は、株式会社を設立すると気には1000万円の資本金が必要でしたが、今は一定の要件を満たせば、1円からでも設立できるようです。(株式会社以外は300万円だったかな?)
     
     では、会社の設立にあたって、なぜ銀行に一定のお金を預けることを、会社法は求めているのでしょうか?
     
     これは、会社が人ではなく、法律上、技術的に人格を与えられた法人だからです。
     
     分かりやすくいうと、代表取締役社長Aと○○株式会社は、法律上、全く別の人と扱われます。
     
     ○○株式会社という人がいきなりポッと出来上がるイメージです。
     
     会社は、法律上一人の人として扱われますから、会社が失敗しても、責任を取るのは、この会社だけです。(株式会社で考えます。)
     
     そうなると、例えば、あなたが、この会社に対してお金を貸していたとすると、あることが気になるはずです。
     
     そうです、『その会社はお金を返してくれるのか?』ということ、つまりは、その会社は責任を取れるのか?ということです。
     
     だからこそ、債権者がとりっぱくれしないためにも、会社には一定の資本金という資産を常に準備していなければならないと規定されているのです。
     
     このような規定は、会社法では、債権者の保護を図る規定と言われます。
     
     会社法が、設立手続きで、『払込み』を求め、払い込んだかどうかを銀行に証明させる手続きを定めているのは、こういう事情があるためなんですね~。

    ◇手続きを欠いたことが訴えの原因になるかどうか?が問題になる

     見せ金では、設立手続きにあった、『払込み』という手続きを満たしません。
     
     ということは、法律で決められた手続きが欠けてしまっているということになりますね。
     
     では、設立に必要な手続きを欠いてしまった場合、その株式会社の設立は無効になるのではないか?という疑問が出てきます。

     つまり、この『払込み』という手続きが欠けることは、会社法828条1項1号・828条2項1号の設立無効の訴えの無効原因に当たるのではないか?という話に発展します。

     ここは、少し発展を含んだ基本ですが、実はこの無効原因は会社法を読むだけでははっきりしません。
     
     だから、無効原因に当たるか?なんて論点が出てくるのです。
     
     このように、手続きが欠ける⇒論点が噴出という感じで、会社法の話は発展していきます。

     現在、自分が学んでいるところが、手続きが欠けた時の論点か?それとも条文の文言の解釈なのか?こういうのを区別する視点を持っておくと、メリハリがきき非常に理解が楽になります。

    ◇誰と誰の関係の話かを意識する

     会社法では、民法とは比べ物にならないほど、多くの登場人物が登場します。

     民法の場合、せいぜい登場するのは3人程です。

     しかし、会社法の場合は・・・。ザッと。

     株主・会社・代表取締役・平取締役・監査役・会計監査人・会計参与・債権者・発起人。

     とにかくたくさん登場します。

     ですので、今現在勉強している所が、誰と誰の間で問題になっている話かしっかり意識する必要があります。

     これを意識すると、メリハリができますので混乱する事を回避できます。

    ◇会社の利益を意識する

     僕たちは、それぞれ別個の人格をもった人間ですが、これと同じように、会社法では会社自体も一個の人格として扱われます。
     
     これは、先に書きましたね。

     つまり、会社が請求の主体となって、取締役等の責任を追求していくシーンがあります。

     これ少しイメージしづらいですが、会社を一人の人間のように考えると論点や話がはっきりと見えてきます。

     会社にも保持すべき利益があって、会社も一人の登場人物として存在すると意識しましょう。
     
     代表的な条文は、423条の役員の責任追求です。
     

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     この責任追求を積極的に行う人は『会社』で、責任を追及される人が取締役などの役員となります。
     

    ◇株式は社員の地位であると今から覚える

     一般に株式というと証券で、投資対象としてのイメージが強いと思います。

     でも、会社法上では株式というのは、会社の社員たる地位のことを表します。

     つまり、会社の所有者でオーナーたる地位が株式であり、株主とはその地位にある者を指します。

     証券(紙の)の株式をイメージすると混乱し分かりづらくなりますから、オーナーのイメージは早々と意識し印象づけておく必要があります。

     ちなみに、一般に『社員』という場合、会社員・サラリーマンのことを想像すると思います。
     
     でも、会社法上では、社員というと株主(会社の所有者)のことを指しますので注意しましょう

     一般的なサラリーマンは、会社法では従業員と表現します。

    ◇株主の利益を意識する

     株式を得て、株式会社の社員たる地位にある者が株主でした。

     この株主は、一般には投資家のイメージが強いところ、会社法がイメージしているのも、これとほぼ同じイメージで構いません。

     つまり、経営を自分で取り仕切ることには興味がなく、投資で利益をあげることを追求しているイメージです。

     会社法では、株主の利益といえば、金・儲けです。

     言い換えれば、株価とも言えます。

     株主の経済的利益は最大限に保証されていると考えてさほど大きな間違いはありません。

     ただし、忘れてはいけないのは、株主というのは会社側であるということです。

     株主といえば、第三者的な立ち位置であるという勘違いをしがちですが、株主は会社のオーナーで、最終的な責任者です。

     取締役の経営に違法と言えるような大きな問題がない場合、会社が潰れれても、最終的な責任は株主がとることになります。(保有株式の限度で有限責任)

    ●【ポイント】株主の間接有限責任

     
     株式会社の株主は、万一その会社が潰れても、その株式会社の株式を保有する限度で、損失を被るにとどまります。
     
     つまり、会社が潰れて、借金が残っていたとしても、この部分は払う必要がありません。
     
     これを、株主の間接有限責任といいます。大変重要な用語です。 
     
     でも、株主は、会社のオーナーでした。
     
     普通、個人商店などのオーナーだと、借金はどこまでも払う必要がありますよね?
     
     なぜ、株主はこのような限定的な責任で勘弁してもらえるのでしょうか?
      
     それは、株主というのが、会社の経営にはあまり興味のない人が多く、常に入れ替わる人達だからです。
     
     株のデイトレーダーなどはその典型例です。 

     この様な人は、基本的にはリスクとリターンしか考えていません。
     
     そのため、例えば、会社倒産の借金まで背負うという重い責任が課されると、株式を買いたがりません。
     
     これに対して、株式会社は、自社のビジネスを拡大するために、手っ取り早く資金を調達したいという需要があります。
     
     そこで、株主のリスクを低くおさえ、株式を買いやすくし、お金を出しやすいシステムを採用しました。
     
     これによって、お金が会社に集まりやすいようにしたのです。
     
     これで、株主の求めるもの(リスクは低く)と株式会社の資金調達の需要も満たすことができます。
     
     このような事情から、株主は限定的な責任しかとらなくていいとされました。

     株主の利益が問題になるのは、多くは合併等の場面や、株式を新しく発行するような場合ですね。
     

    ●【ポイント】株主平等原則

     株主に間して、基本的な原則といえば、一番に挙げられるのが、『株主平等原則』です。
     
     株主平等原則とは、『株式会社の株主は、株主としての資格に基づく法律関係においては、その内容及び持ち株数に応じて平等に扱われなければならないとする原則』をいいます。

     これは定義です。
     
     特に重要なのは、『株主としての資格に基づいて』『内容及び数』『平等』の3点です。
     
     つまりは、株主は、株式い基づく地位については、不平等な扱いを会社から受けないよという原則です。
     
     この原則に反する会社の株主に対する行為は、法律で許容されているものを除いて、無効となります。
     
     株主平等原則は強行規定ということを今常識にしましょう。

    ◇会社財産は本当に大切

     会社財産は、一般に資本金などと言われます。

     貯金のような一定量の財産を、会社が蓄えておくことは、尋常ではなく重視されます。

     会社法を学ぶ時には、この会社財産を目減りさせるような手続き違反は、ほぼ無効と考えるようにすると、わかりやすいです。

     会社財産⇒大切という認識は、常識としましょう。

    ◇債権者の利益を意識する

     会社法の分かりにくいポイントの一つとして、ところどころ債権者という利害関係人が登場します。

     この立ち位置が初めのうちはよくわかりません。

     下記図をまずご覧ください。

     

    債権者 会社

     債権者というのは、読んで字のごとく、会社に債権を有する人です。

     例えば、一般に会社というのは、いろいろな取引先と取引があります。

     大手であればあるほど、会社外部と多数の取引を日々休むことなく繰り返しています。

     ふつう、会社と取引先との取引は『ツケ』のような形で、一定周期ごとに決済を行うのが一般的です。

     例えば、A会社とB取引先が、3ヶ月で100回の取引をしたとしましょう。

     そして100回分の取引で発生した支払いの合計額を、3ヶ月後にまとめて支払うという取り決めをしているとします。

     このような会社間の取引は、B取引先に対して、A会社が、3ヶ月分の支払い合計額を借金しているのと同じだと考えることができます。

     これに対して、B取引先は、A会社に対して債権という形で、3ヶ月分の支払いを請求する権利を保有しています。

     このB取引先というのが、会社法にいう『債権者』に当たります。

     この債権者は、会社とは独立した第三者です。

     つまり、株主とは違って、会社側ではないということです。

     この債権者の一番の関心といえば『債権が回収できるのか?』という点に尽きます。(先の預け合いのところでもかきました。)

     この期待を保護するため、会社財産を維持する事を会社法は非常に重視しています。

     なぜなら、債権者が債権を会社から回収できるかどうかは、会社財産が残っているかどうかで大きく変わってくるからです。

     会社債権者が登場する場面はさほど多くありませんが、この人の立ち位置と会社との関係、どのような点に利害を持っているのか?これだけは明確にしておきましょう。

     あいまいでは、混乱してしまいます。
     
     会社法上、債権者が登場する代表的なシーンは、役員に対する429条責任を追及する場面です。
     

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    ◇設立時発起人は最強の権力者と思う

     
     会社法では、会社設立後の運営についての話がメインとなりますが、設立前の会社というシーンも登場します。

     この設立前の会社の際、主人公となるのが『発起人』です。

     発起人ってなんだ?と思われるでしょうが、一般には創業者と同義です。

     つまり、会社を立ち上げる起業家というやつです。

     この発起人ですが、イメージ的には設立後の取締役のような役回りをします。

     この両者の大きな違いは、発起人の他に、第三者的な監督機関が存在するかどうかというところ。

     つまり、取締役の場合は、監査役や会計監査人、株主、その他の取締役と、みんなにその業務執行の適性を監視されます。

     ですので、権限は大きくとも、下手なことはできません。

     これに対して、発起人の場合は、まだ設立中の話ですから、発起人の業務執行の適正を監督・監視する体制が整っておりません。

     やりようによっちゃ、やりたい放題できるということです。

     だからこそ、会社法は、ここに配慮を払う規定を設けています。

     設立時はそういった発起人の権限の大きさに注目して勉強すると分かりやすくスっと入ってきます。
     

    ●【ポイント】設立中の会社と発起人の権限

     会社法上、設立時の重要論点としては、設立中の会社の権限はどのようなものか?という点が一つ。
     
     そして、設立中に発起人がした行為は、設立後の会社に帰属するのか?という問題がもう一つあります。
     
     通説的な見解は、どちらの行為も設立後に帰属するとします。

     

    ●【ポイント】変態設立事項

     会社法上、設立中の会社は、その資産をちゃんと評価して、一定の資産を設立中の会社が確保しているかが、非常に重視されます。
     
     そのため、会社法は、財産引受などの、会社財産を危うくするような出資方法を制限しています。
     
     財産引受とは、会社設立のときに、発起人が会社の成立を条件として、成立後の会社のために、一定の営業用の財産を譲り受けることを契約するものです。
     
     要は、会社への払込みの一種と考えれば分かりやすいです。
     
     この財産引受の、財産価値の評価は恣意的になりがちです。
     
     例えば、譲り受ける財産が不当に過大なもので、会社が設立したはいいものの、会社財産はすっからかんというのでは債権者を害してしまいます。
     
     そこで、会社法は、このような野放しにすると会社財産を危うくするような出資方法については、定款(ていかん)という書類にちゃんと書かなければ、効力は生じないよと決められています。

    ◇所有と経営の分離とは

     株主はオーナーということを先に書きました。
     
     会社法では、所有と経営の分離という考え方が、本当に基本的で、問題を解くための基礎的な知識となってきます。

     会社法においての所有と経営の分離とは、お金を出すオーナーと、実際に会社を経営する人は別であるということです。
     
     株式会社でいうと、このオーナーに当たるのが株主。
     
     お金を出す人です。
     
     そして、実際に経営を行うのは、取締役という経営のスペシャリストです。
     
     この取締役は、お金は出さず、株主の所有する株式会社と経営を委任された人で、報酬という形で給料が払われます。
     
     このように、会社法上の株式会社の形態は、このように会社の所有者と、経営を実際に行う経営者が『分離』している会社が最もスタンダードです。
      
     つまり、この株主・取締役と別れた会社形態を前提に会社法の話は進むということです。
     
     ただ、現実的には、日本の会社は90%以上が中小企業で、ほとんどの場合は所有と経営の分離はなされていないのが現実です。
     
     つまり、社長さんといえば、出資者、つまり株主で同時に経営も手がけている場合がほとんどで、このような携帯も株式会社として問題ありません。

     会社法の想定する所有と経営が分離している会社は、一般的には上場企業などの誰もが知ってる大きな会社であることがほとんどです。

     所有と経営が分離した会社では、株式の売買(譲渡)が日々繰り返され、日々誰がオーナーかわからないほどに株主が移り変わります。
     
     そして、このような株主は、経営には興味がないことが普通です。

     株式の投資家をイメージしてもらえれば分かりやすいですね。
     
     つまり、普通、投資家は投資のスペシャリストではあるかもしれませんが、経営についてはズブの素人で、自分が経営することには興味がない人が多いはずです。

     金を出すのは株主、そして、経営を取り仕切るのは、経営のスペシャリストである取締役に任せる。

     これが所有と経営の分離。

     経営の合理化であり、役割を専門化する事によって、競争力をつけるための知恵ということになります。

     この役割分担の感覚は非常に重要です。

    ●【所有と経営の分離を具体例でイメージ】

     例えば、大手で上場企業のトヨタなんかで考えてみましょう。

     トヨタという会社の社長さんは、2013年11月現在では、豊田社長だったと思います。

     では、このトヨタという会社は、豊田社長のものなのでしょうか?

     違いますね。トヨタという大きな会社は、トヨタの株式を保有している株主のものです。

     株主がトヨタを所有しており、豊田社長はあくまで経営の専門家として株主から経営を『委任』されているという関係になります。

     わかりやすく言うと、『あんた会社運営するの上手いから、俺のもってる会社たのむよ』という感じです。

     このように、会社の所有者と経営者が分離している形態を、会社法では『所有と経営の分離』と表現します。

     具体例はあくまでわかりやすくするためのフィクションですので、実際トヨタの運営がどのような形になっているかは置いときましょう。

    ◇取締役というのは強大な権限を持っていると恐れる

     
     会社法で登場する一番のスターは取締役です。

     その責任は非常に重く、会社法上、その権力を監視される機会も多いです。

     取締役については、一つは『取締役が会社の財産をくいものにする(浪費する)』ことを防止するという視点から問題があり。
     
     もう一つは、会社等の利害関係人に損害を出した場合に重い損害賠償責任を負うという視点で問題になります。

     ざっくり2つに分けましたが、会社法ではここは非常に重要な分野です。
     
     いわゆる『取締役をはじめとする役員の責任』に関する問題です。
     
     この役員お責任は、大きく423条責任と429条責任に分かれます。
     
     423条責任は、民法の債務不履行に対応し、429条責任は民法の不法行為責任に対応します。

     そのため、民法が得意な人はトントンとクリアできるところでもあります。
     
     もちろん、役員の責任といえば、他にいくつも会社法上の責任がありますので、この責任はあくまで基本中の基本です。

    ◇取引の安全は民法の比ではないほど重視される

     会社法では、会社の意思決定が完了すると、この意思決定に基づいて、多くの利害関係人が関わる事になります。

     例えば、取締役会である決議を行い、これに基づいて、代表取締役が業務執行をしたとします。

     大きな会社であれば、数日中に多くの利害関係人が関わることになり、この業務執行を後日取り消すことになると、とんでもない損害が多数の人に降りかかることになります。

     ですので、会社法では、一旦外部の利害関係人が関わると、もうよほどのことがない限り、このような会議の決議が取り消されることはありません。
     
     余程おかしい事例でない限り、迷えば、取り消しができない方向で回答すれば大抵正解です。

     民法では、よく第三者の主観的要件(悪意・善意)を問題にすることがあり、緻密な利益衡量(りえきこうりょう)が腕の見せどころです。
     
     これに対して、会社法の場合はスパッと割り切ることが多く、主観的要件は考慮されない事が多いです。(もちろん考慮される場合もあります)

     つまり、民法よりもさらに取引の安全が重視されるという事になります。
     
     ちなみに、利益衡量とは、ある利益と他の利益を比較してどっち重視するのが妥当かを考えること。
     
     そして、取引の安全とは、取引に何らかの問題が起こった場合でも、より取引を有効にする方向で考えていこうとするためのひとつの理由です。

    ◇とりあえず取締役会設置会社が基本

     会社法では、多くの組織の形が登場します。

     非公開会社・公開会社・取締役会設置会社・大会社・委員会設置会社・合名会社・合資会社・合同会社・・・etc///

     株式会社の形(機関設計)だけでも全部で39パターンもあるほどです。

     ただ、このパターンは全て勉強する必要はなく、最も基本形となる取締役会設置会社という形態の会社が中心です。

     会社法の話のほとんどは、この会社形態を基礎に展開されます。

    6)商法の対策は?

     商法・会社法は行政書士試験では、科目のウエイトはさほど高くありません。

     行政書士試験の商法・会社法対策としては、ごくごく基本的なことを正確に記憶していれば、対応はさほど難しくありません。

     この商法の対策ですが、出来る限り時間をかけたくありませんので、下記でまとめてみました。

     ↓  ↓  ↓  ↓

     行政書士試験:法律科目⇒『商法』対策の全て。効率的に攻略する秘訣

    まとめ

     いかがでしたか?
     
     商法・会社法のごくごく基本的な原則や考え方、特徴についての解説は、ここでは終了です。

     長らくお付き合い頂きありがとうございました。

     商法は、難しい科目で、凄く範囲が広く覚えることも多い科目です。
     
     でも、同じような視点で論点が展開されることが多く、その考え方の特徴さへマスターしてしまえば、まとめていくつもの論点を覚えることができます。

     できるだけ時間をかけず、淡々と攻略するためにも、上記を意識されることをおすすめします。

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    最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

    学鬼
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