1時間で民法がわかった!皆が勉強する基本中の基本13項《不法行為/債権の履行確保編》【行政書士・法律資格用】
民法の基本中の基本の解説記事シリーズも、ようやく最後になりました。(ただ、家族法含む番外編あり⇒合計4記事)
当初想定したより気合を入れて書いていますので、大変でしたが、もう一息・・・頑張ってみようと思います。
これまで、民法総則・物件 / 債権法とガッツリ書いてきました。
上記の分野もボリュームのある箇所ですが、この記事で取り扱う不法行為及び担保も負けず劣らず大切でボリュームのある箇所になります。
民法は、なんといってもその分量が一番のウリである法律なので、勉強に一番時間がかかる法律でもあります。
あと少し、さぁ一緒に頑張りましょう。
INDEX
(1)不法行為等(契約以外の債権発生原因)
この項に書かれていること
- ◇1)契約以外の債権発生原因って?
- ◇2)事務管理
- ◇3)不当利得
- ◇4)不法行為(全般)
- ◇4)-1不法行為(一般不法行為)
- ◇4)-2不法行為(監督者責任)
- ◇4)-3不法行為(使用者責任)
◇1)契約以外の債権発生原因って?
以前の2つの記事では、民法の総則・物件及び債権法についてザックリ基本中の基本を書いてきました。
中でも特に債権法について書いた記事では、何度か債権の発生原因について述べさせていただいきました。
つまり、債権の発生原因の一つは契約だよねというあの話です。
債権とは?おさらい
ここで、債権とは何だったでしょうか?
ある人からある人に対して、一定の請求が出来る権利でした。
つまり、請求権です。
契約は、債権の発生原因の一つにすぎません。
他にもいくつか債権の発生原因がありますが、特に民法上で大切なのは、2種類の発生原因です。
それは下記の通り。
債権の発生原因の分類
- ◆当事者の意思に基づいて発生する場合
- ◇当事者の意思に関係なく発生する場合
大きくはこの2種類です。
債権法で述べた、契約は合意によって成立しますから、契約に基づいた債権の発生は、上記◆の当事者の意思に基づいて発生するものに分類されます。
これに対して、今回の記事のメインテーマとなるのが◇の当事者の意思に関係なく発生する場合です。
具体的には、事務管理・不当利得・不法行為です。(これ以外にもありますが取り敢えずこの3つが基本です)
この大きく分かれる2つの考え方はかなり民法をやりこまないと見えてこない視点(考え方)です。
民法の体系が身について初めて『そうだったのか』と気付くのですが、実は、民法を得意にする上ではこの分類は重要でちゃんと区別する必要があります。
発生原因が意思に基づくかどうかが重要な理由
なぜ重要なのでしょうか?
それは、債権が成立する条件の厳しさが違ってくるからです。
民法は、私的自治の原則で、当事者の意思を大変重視する態度をとっています。
これは、総則・物権の記事で、説明させていただきました。
そして、上記の当事者の意思に基づく債権の発生原因は、合意だけで簡単に債権が発生します。
つまり、債権の成立要件は、『合意』だけです。
これに対して、当事者の意思に基づかない債権の発生原因の場合は、債権が発生する要件が、非常に厳しくなります。
例えば、当事者の意思に基づかない債権の発生原因の代表である不法行為などは、要件と呼ばれる条件がたくさんあります。
この要件を全部満たさなければ、不法行為は成立せず、債権は発生しません。
ということは、不法行為の分野では、この要件を正確に暗記することが、重要になるということです。
このような、流れを踏まえ、下記を見ていきましょう。
◇2)事務管理
事務管理はあくまで例外規定
『じむかんり』と読みます。
この事務管理というのは、簡単にいうと『他人のおせっかい』です。
おせっかい、つまり、自分が頼んではないけれど、他人が自分の利益のために、助けてくれるようなイメージです。
ただ、民法では、原則として、他人の生活への不当な干渉は排除されますから、この事務管理は、例外的な制度であるといえます。
事務管理の具体例
例えば、隣人(A)宅が旅行中で留守にしている最中、台風が来て隣人宅の屋根が吹っ飛んでしまった場合をイメージしましょう。
民法の原則通り他人の生活に干渉すべきでないのはその通りです。
でも、このまま放っておけば、家の中は水浸しですし、近所の家に瓦礫が飛んできて危ないかもしれません。
そんな時、隣人の利益になるように、他人(B)が大工さんを呼んで隣人(A)宅の屋根の応急処置をする必要もあるでしょう。
こんなとき事務管理の規定が役にたちます。
事務管理の費用負担について
他人が勝手におせっかいをやくのが事務管理のイメージでした。
上の台風の事例では、隣人の利益になるように、他人(B)が大工さんを呼んで隣人(A)宅の屋根の応急処置を依頼する場合もありました。
では、(A)さんは、大工さんに修理代金を支払う必要があるのでしょうか?
なぜこの費用負担が問題になるかというと、大工さんへの依頼はあくまで他人(B)が勝手にしたことだからです。
つまり、本人である隣人(A)の意思に基づかないから問題になるのです。
自分の意思で大工を呼んだわけではないのに、Aが費用を払わなければならないとすれば、(A)は納得いかないのが普通です。
だからこそ、Aさんが費用を負担しなければいけない場合について、いくつかの『要件』を規定しています。
事務管理も債権の発生原因が、債権者の意思に基づかないものとして、要件が厳格です。
民法の代理と似てない?
民法総則の記事で、『代理』という制度(規定)について記述したと思います。
この代理と大きく違うのが、本人の意思に基づくか、基づかないか?この点なのです。
代理の場合は、本人が代理人(上記例で言えば他人(B))に自分の意思で依頼をしますが、事務管理の場合はそんな依頼はありません。
だからこそ、代理の場合と違い、事務管理では、隣人(A)に費用を負担させてもいいの?負担させるならどんな場合?とルールが必要になってくるのです。
◇3)不当利得
『ふとうりとく』と読みます。
重要な判例がいくつかあり、不当利得と言えばこの話という典型的な事例があります。
その典型的な事例の一つに転用物訴権と呼ばれる論点がありますが、これはまた機会があれば書く事にします。(この論点の解説だけで、相当長くなってしまいますので・・。)
不当利得って??
不当利得は、読んで字のごとく、『あんた不当に利益を得てるでしょう?返して』という話です。
例えば、ある契約が、詐欺を理由に取り消された場合、すでにお互いに契約の履行を済ませていたとします。
このような状況下で、詐欺を理由に契約を取り消せば、物を引き渡したり代金を支払ったりする理由が消滅しますので、元に戻すため互いに返還請求権が成立します。
渡したものを返してという権利ですね。
これが、不当利得の典型例です。
結局、不当利得は、自分の損害に基づいて、相手が根拠のない利益を得ている時に、それを返せと言えるよという話です。
混乱しがちな不当利得の要件『法律上の原因なく』
ちなみに、不当利得は、4つ要件(請求権が成立するための条件)があるのですが、その中でも、『法律上の原因なく』という要件はもっとも混乱しがちな要件です。
判例は、『法律上の原因なく』の意味を『公平の理念から見て、財産的価値の移動をその当事者間において正当なものとするだけの実質的・相対的な理由がないこと』と表現します。
難しいですよね~。
簡単にいうと、利益がある人からある人へ移転しているのを、まず、じっくり観察してみましょう。
そして、その移転は普通の感覚から正しいと言えるの?それを検討しましょう!ということを言っています。(厳密ではありませんが・・・・。イメージです。)
勉強の初期段階では、この程度で十分です。
ちなみに、冒頭で挙げた転用物訴権の話はまさに、この要件に関わることです。
◇4)不法行為(全般)
この不法行為の分野は民法の中でも特に大切な分野です。
これに比べれば、事務管理・不当利得は『ざっと勉強しとけばいいんじゃね?』程度の重要度といえます。
難関法律系資格の記述式でも、不法行為の問題は頻繁に書くことを求められます。
民法上不法行為には、下記のような種類の不法行為が存在します。
民法上の不法行為の種類
- 一般不法行為
- 監督者責任
- 使用者責任
- 工作物責任
- 動物占有者の責任
- 製造物責任
- 共同不法行為
この中で、最も基本となるものが一般不法行為です。
ここをしっかり勉強していなければ、他のものはよくわからなくなります。
ちなみに、一般不法行為以外の6つの不法行為は、『特殊の不法行為』と言われています。
この特殊の不法行為の中で、特に重要なのは、使用者責任と監督者責任です。
次に、共同不法行為と工作物責任当たりがやってきます。
ちなみに、一般不法行為と使用者責任・監督者責任が完璧に理解できていると、他の不法行為は読むだけですぐ理解できます。
一般不法行為が最も基本で、少し応用となるのが使用者責任・監督者責任ということになります。
この記事では、特に基本となるこの3つの類型についてここでは説明していくことにしましょう。
次のページへ!!