《スキマ時間で勉強》行政書士試験の重要判例3選[憲法編]part2

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《じっくり読んだときの読了時間》: 821

スキマ時間で判例!

 行政書士試験の法律科目である、憲法。
 
 その出題で特に重要視されるのが、判例です。
 
 行政書士試験においては、判例への正確な理解が必要とされます。
 
 正確な理解をするためには、ポイントを把握し、そこをピンポイントで勉強していくこと。
 
 この記事では、スキマ時間で行政書士試験に出題される重要判例の理解を深めるためのポイントと、注意すべき盲点について書いてみようと思います。
 
 パート2です。

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日産自動車事件(最高裁昭56年3月24日)

この判例の事案

 当時、日産自動車には男子55歳、女子50歳を定年とする就業規則が設けられていました。

 この規則に基づき、ある女性が日産自動車を退職させられました。 

 これに対して、女性が、『不当な男女差別』を理由とする訴訟を提起しました。

この判例の論点

1)男女で定年に差異を設けることは憲法14条に反して差別になる?

 

《判旨》

 もっぱら女子であることを理由として女子の定年年齢を男子より低く定める就業規則は、性別による不合理な差別を行うものである。

 憲法の人権保障は、私人間に当然に及ぶものではないが、憲法14条の規定の趣旨に鑑み、民法90条の規定により無効である。

 定年退職の年齢に『男女』の性別を理由として差異を設けるのは違憲だよということですね。

●【ポイント1】私人間効の話

 憲法の私人間効力の論点で代表的な判例はPart1で紹介した『三菱樹脂事件』が最重要ですが、この日産自動車事件もちらほら出てきます。
 
 こちらも三菱樹脂事件と同じように、憲法を間接的に適用し事案の解決を図りました。
 

●【ポイント2】民法90条の枠組みで判断

 判旨を見てもらえるとわかると思いますが、憲法14条の価値観を、民法90条の枠組みで解釈適用して、判断しています。
 
 まさに関節適用です。

マクリーン事件(最高裁昭53年10月4日)

この判例の事案

 
 死ぬほど重要な判例なので、かなり詳しく事案を書いてあります

 アメリカ合衆国国籍のマクリーン氏は、1969年5月10日に在留資格(在留期間1年)の上陸許可を受けて日本に入国しました。
 
 同在留資格は他の資格に含まれない『その他すべて』を網羅するもので、許可の際に活動内容(目的・職種・勤務先等)が個別に指定されていました。
 
 ところが、マクリーン氏はある語学学校の英語教師としての稼働許可を受けていたものの、入国管理事務所に届け出ることなく別の職場に勤務先を変更しました。
 
 また、在留中に外国人ベ平連に参加してデモなどの活動を行いました。(政治活動)

 翌1970年に、マクリーン氏が1年間の在留期間更新の申請をしたところ、許可はなされたが活動内容は『出国準備期間』とされ、期間は120日間に短縮されてしまいました。
 
 これに対して、マクリーン氏は在留期間1年を希望して再度の在留期間更新申請。
 
 しかしながら、同再申請は不許可となってしまいました。
 
 そこで、マクリーン氏はこの処分の取消しを求め訴訟を起こしました。

この判例の論点

1)憲法の人権規定は外国人にも保障されるか?(人権享有主体性の問題)

 

《判旨》

 権利の性質上、日本国民のみを対象とするものを除き、在留中の外国人にも、等しく及ぶ。

 外国人にも憲法の人権規定は原則保障されるよということです。

●【ポイント1】原則と例外を間違えない

 同じような話で、法人の人権享有主体性の話があります。
 
 人権享有主体性とは、簡単に言っちゃえば、『憲法の人権がその人に保障されるのかどうか?』という話です。
 
 外国人は、原則人権は保障され、例外的に保障されない場合があります。
 
 これに対して、法人は、原則人権は保障されない、でも例外的に可能な限り保障はしていこうね。
 
 判例はこういうニュアンスで判断をしているようです。

2)外国人に『政治活動の自由』は保障される?

 

《判旨》

 思うに、憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、
 
権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、<>/span

 政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、
その保障が及ぶ。

 別に日本国民だけを対象とした人権ではないので、外国人にも保障されるべきだよねって感じです。

●【ポイント1】判例の人権享有主体性の基準を使ってちょっと考えてみよう

 政治活動の自由は、憲法21条の表現の自由として保障されるというのが圧倒的多数派(通説)です。
 
 この表現の自由という自由権(人権)は、どんな人権でしょうか?
 
 ここで、人権享有主体性について、判例は下記のように判断しましたね?
 
 『権利の性質上、日本国民のみを対象とするものを除き、在留中の外国人にも、等しく及ぶ。』
 
 ところで、表現の自由という人権は、その性質から、日本国民のみを対象とするものと言えるでしょうか?
 
 いえませんよね?
 
 表現の自由という自由権は、ちゃんと人権の概念が確立している国であれば、万国共通の価値観をもった権利であるはずです。
 
 これは、政治活動の自由も同じことが言えるはずです。
 
 だから、外国人にも保障されるとされて当然なんですね~。
 
 以上のような基準を使って具体的に考える作業を『あてはめ』といいます。 

3)外国人に『入国の自由』は保障されている?

 
 

《判旨》

  憲法上、外国人は、わが国に入国する自由・在留の権利・引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものではない。

 読んで字のごとくです。

●【ポイント1】普通に考えて当然の話

 外国人に入国の自由が保障される国なんてあるんでしょうか?
 
 僕は国際派ではないので、あまり存じませんが・・・。
 
 普通海外に行けば、からなず入国審査がありますから、これは常識的にも、当たり前のような判断だと僕は覚えていました。

4)外国人に『在留の権利』は保障されている?

 

《判旨》

 憲法上、外国人は、わが国に入国する自由・在留の権利・引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものではない。

 《中略》 

 出入国管理令は、当該外国人が希望するときには在留期間の更新を申請することができるとし、
 
 その申請に対しては法務大臣が『在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り』これを許可することができるものと定めている。

 そして、その判断基準が特に定められていないことから、更新事由の有無の判断は法務大臣の広汎な裁量に委ねられている。
 
 《中略》

 法 務大臣が、当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとって好ましいものではないと評価し、
 
 また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるも のとはいえないと判断したとしても、
 
その事実の評価が明白に合理性を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえない。
 

 外国人に在留の権利はありませんよ。在留できるかどうかは法務大臣の広範な裁量で判断されますよということです。
 
 そしてその裁量が違法になるのは、『その事実の評価が明白に合理性を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである』場合ですよということです。

●【ポイント1】裁量権の話は行政法で詳しく勉強することになる

 ここの法務大臣の裁量権の話は、憲法ではなく、行政法の『行政裁量』というところで詳しく勉強することになります。
 
 ここでは、『在留資格が更新されるかどうかは、裁量判断に委ねられているんだ、そして裁量判断は違法になる場合があるんだな』と覚えておけば、行政書士試験では十分です。

5)在留資格更新の際に、政治活動をしたという事実を消極的に考慮されないことまで人権として保障される?

 

《判旨》

 しかしながら、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないので、

 在留期間中になされた、憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。

 外国人に政治活動の自由は保障されるが、その活動をしたという事実を、在留期間更新の際に悪い方向で考慮しても、別に人権侵害にはならない。

●【ポイント1】『消極的な事情としてしんしゃくしない』って?

 判例はこういう分かりにくい表現がたくさん出てきます。
 
 ここでの消極的とは。
 
 外国人が『在留期間を更新してね』と申請したとき、国は、その人についていろいろなことを考慮して、更新するかどうかを決めます。
 
 このいろいろと考慮する過程で、『あぁこの人は政治活動しているから、更新しないでおこう』と悪い方向の事情として考慮することもあります。
 
 このように悪く評価することを、消極的と表現しているんですね。
 
 つまり、更新不許可の方向で考慮することを、『消極的な事情としてしんしゃく』と表現しています。
 
 ちなみに、積極的というと、前向きでプラスに評価することを指す場合が多いですね。
 
 判例が、『消極的にしんしゃくされないことまで保障されない』としているのは、政治活動の自由は保障されるから自由にやっていいけれども、更新のときは、悪く評価されてしまうかもしれないよ、そしてそれでいいよということ。
 

八幡製鉄政治献金事件(最大判昭45年6月月24日)

この判例の事案

続いて申し訳ないですが、これも尋常でなく重要です。

 八幡製鉄所の代表取締役2名が昭和35年3月14日、自民党へ350万円の政治献金をしました。
 
 八幡製鉄所は『鉄鋼の製造及び販売ならびにこれに付帯する事業』をその目的とすると定款に定めていました。
 
 これに対し株主が『政治献金は定款所定の目的を逸脱するものであり、その行為は定款違反の行為として商法266条1項5号(現・会社法120条1項及び847条1項)の責任に違反するものである』と主張。
 
 八幡製鉄所に対して損害賠償を求める株主代表訴訟を提起しました。

この判例の論点

1)憲法の人権規定は法人にも及ぶのか?

 

《判旨》

 憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきである・・・
 

 法人にも出来る限り人権は保障していきましょうといっています。

●【ポイント1】法人の人権享有主体性の話

 先のマクリーン事件は、外国人の人権享有主体性の話でしたが、ここは『法人』の話です。
 
 原則と例外が逆転していると覚えると楽です。
 
 比較してみると面白いですよ。

2)会社にも『政治的行為(政治献金)をする自由』はあるか?

 

《判旨》

 性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。

 政治資金の寄附(政治献金)もまさにその自由の一環である。

 政治献金の自由も法人に保障されます。

3)憲法は『政党』の存在を認めてる?

 

《判旨》

 憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、

 憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。

 憲法は政党を不可欠の要素として認めているよ。

●【ポイント1】憲法には政党に関する規定はない

 
 けれども・・憲法は議院内閣制を採用しているから、政党の存在を当然に予定しているよねということがポイントです。
 
 規定はないけど、憲法を読んでみると、政党はの存在は憲法違反でもなんでもないよというところがミソです。

4)政治献金は定款違反にはなるか?

 

《判旨》

  本件政治資金の寄附は、八幡製鉄株式会社の定款の目的の範囲内の行為である。

 この話は、政治献金をすることも、会社の目的に反しないんだなとザッと覚えておけば十分だと思います。
 

最後に一言

 この《スキマ時間で勉強》シリーズは、初回10分~15分で勉強でき、2回目3回目と見返せば、5分ほどでおさらいできる内容にしたいなと思い、書いている記事です。 

 本当は前回同様5選判例を掲載したかったのですが、重要判例があったので、3選で止めときました。
 
 やっぱり重要判例はキツいです(笑)
 
 それでは、この記事はこのくらいで。 

 勉強頑張ってください!

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最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

学鬼
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