《スキマ時間で勉強》行政書士試験の重要判例5選[憲法編]part1

公開日: : 最終更新日:2014/07/09 法律系科目対策, 法律系資格全般, 行政書士資格 , ,

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《じっくり読んだときの読了時間》: 755

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 行政書士試験の法律科目である、憲法。
 
 その出題で特に重要視されるのが、判例です。
 
 行政書士試験においては、判例への正確な理解が必要とされます。
 
 正確な理解をするためには、ポイントを把握し、そこをピンポイントで勉強していくこと。
 
 この記事では、スキマ時間で行政書士試験に出題される重要判例の理解を深めるためのポイントと、注意すべき盲点について書いてみようと思います。

2014年 7月8日 更新しました!!
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記帳所事件(最高裁平元年11月20日)

この判例の事案

 

 注:事案はマイナーなので興味があれば確認しましょう。
 なければ、『天皇を訴えた珍しい事案』で覚えましょう。

 千葉県知事は、昭和天皇の病気の快癒を願う県民記帳所を設置するため、設置につき、公費を支出しました。
 
 この支出に関して、千葉県住民Aは、この支出は違法であるとし『天皇が費用相当額を不当利得した。』と主張しました。
  
 天皇に対して、費用相当額の返還を請求するという珍しい判例です。

 

この判例の論点

天皇に民事裁判権が及ぶかどうか?

 
 

《判旨》

 天皇の象徴たる地位を考慮すると、天皇には、民事裁判権が及ばない。

 

 つまり、天皇には民事裁判権は及ばないと判断。

●【ポイント1】

 天皇に民事責任が及ぶか?という問題と民事裁判権が及ぶか?という問題は別です。混同しないようにしましょう。
  
 天皇に民事責任が及ぶかどうかは学説上争いありますが、通説は『及ばない』とします。
 
 民事裁判権は、及びません。ちなみに、天皇に刑事責任はありません。

 この判例では事案はすっ飛ばして、ここだけ覚えればあとは重要ではありません。

●【ポイント2】

 民事裁判権とは、裁判できるかどうか?です。
 
 民事責任は、民事上の法的な責任があるかどうか?です。
 

警察予備隊違憲訴訟(最大判昭27年10月8日)

この判例の事案

 社会党員Aは、国が行った警察予備隊の設置が憲法9条違反であるとして、警察予備隊設置の無効確認を求めて訴訟を提起しました。

 Aは同時に『具体的な訴訟に関係しなくとも裁判所が違憲審査権を行使するのは当然である』との主張をしました。

この判例の論点

1)裁判所の持つ違憲審査権は抽象的審査権を有するか?

 

《判旨》

 わが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ、裁判所にその判断を求めることができるのであり、

 裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上および法律上なんらの根拠もない。
 

 つまり、日本の裁判所の違憲審査権は『抽象的審査権』ではないということを示しました。

●【ポイント1】

 注意しなければならないのは、判例は『付随的審査権』については判断していないというところです。
 
 日本の違憲審査権が付随的審査権であることに争いはありません。

2)下級裁判所にも違憲審査権はあるのか?

 

《判旨》

 最高裁判所は法律命令当に関し違憲審査権を有するが、この根拠は司法権の範囲内において行使されるものであり、この点においては、最高裁判所と下級裁判所に異なるところはない。

 つまり、下級裁判所にも違憲審査権はある旨判断しました。

砂川事件(最大判昭34年12月16日)

この判例の事案

 東京都北多摩郡砂川町にある米軍立川基地で、基地拡張のための測量を、東京調達局という機関が行いました。
 これに反発し、基地拡張に反対するデモがなされました。
 その過程で、デモ隊の一部が基地内に侵入したため、日米安保条約に基づく刑事特別法第2条違反に問われ、デモ隊の一部が起訴されました。

 

この判例の論点

1)駐留米軍は、憲法9条2項で禁じられている『戦力』(自分の文言)の保持にならないのか?

 

《判旨》

 同条項において、戦力の不保持を規定したのは、我が国が戦力を保持し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、

 同条1項において永久に放棄することを定めた侵略戦争を引き起こさせないようにするためであると解するを相当とする。

  従って、同条2項が保持を禁止した戦力は、我が国が主体となって、指揮権、管理権を行使できる戦力のことであって、
 
 結局我が国自体の戦力を指し、外国の軍隊はたとえ我が国に駐留するものであっても、同条項の戦力には該当しないと解すべきである。

 
 つまり、外国の軍隊は、9条2項の『戦力』には該当しないと判断。

2)条約を司法審査の対象とできるか?

 

《判旨》

 本件、安全保障条約は、主権国としての我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するものであるので、

 その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣、承認した国会の高度の政治性ないし自由裁量的判断と表裏をなす点が少なくない。

  それ故、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまないものであり、

 一見して、きわめて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、

 それは第一次的には、締結権を有する内閣、承認権を有する国会の判断に従うべきで、終局的には主権を有する国民の政治的判断に委ねられる。

 つまり、条約については、原則的に司法権(裁判所)が判断すべきでない。
 ただ、明白な場合には、条約も司法審査の対象となる余地を残した。
 

●【ポイント1】

 ここのポイントは、『統治行為論』という理論に関係する話であることです。
 
 統治行為論とは、三権分立の一翼である司法権が、立法・行政の高度に政治性を有する行為に口出しすべきではないよという理論です。
 
 簡単にいうと三権分立の役割分担の話です。

 注意しなければならないのは、この砂川事件の判旨は、純粋な統治行為論ではないことです。
 
 ちょっといびつな当地行為論に似た判旨になっています。

 純粋な当地行為論は、ト米地事件(とまねじじけん)[漢字が出てきません↓でした]という判例で採用されたという違いは区別しなければなりません。
 
 条約といえば砂川。解散といえばト米地と区別しましょう。 

●【ポイント2】

 砂川事件の判旨で特徴的で覚えておくポイントは、『一見極めて違憲無効と認められない限り』として司法審査の余地を残したという点です。
 
 ここは、死ぬほど重要です。 

3)自衛権について

 
 

《判旨》

 わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として、当然のことと言わなければならない。

 つまり、日本には自衛権があると判断した。

●【ポイント】

 今、集団的自衛権の議論が沸騰していますね。
  
 集団的自衛権の根拠として、この砂川事件を引用する論客もいらっしゃるようです。

 でも、砂川事件では、自衛権は認めたものの、その自衛権が個別的自衛権であるか・集団的自衛権であるか?は判断していないという事に注意しましょう。

昭和女子大事件(最高裁昭49年7月19日)

この判例の事案

 A女子大学の学生2名は、学則で届出制が決められているにもかかわらず、無届で政治的暴力行為防止法反対の署名を集めました。
 この活動が『生活要録』に違反したとして、自宅謹慎処分に。
 にもかかわらず、その後も学外で、大学側を誹謗する活動を行っていたことから、学則違反で退学処分となってしまいました。
 これに対して、女子学生達は、退学処分は無効であると主張し、出訴しました。

この判例の論点

1)憲法の人権規定は、私人の間に適用されるか?

 

《判旨》

 憲法第19条、第21条、第23条のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して、個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、

 専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人間相互の関係について当然に適用ないし、類推適用されるものでないことは、三菱樹脂事件の示すところである。

 つまり、憲法の人権規定は詩人とし人の間には適用されない

●【ポイント】

 昭和女子大事件は、憲法の論点である私人間効の論点に関わる判例です。
 
 私人間効とは、憲法は国家を縛る法律なのに、そんな憲法を一般私人の間の争いに適用してもいいんだろうか?という疑問から出てくる論点です。 

 この論点で最も有名なのは、上の判旨にも出ている三菱樹脂事件ですので、こちらを優先的に勉強しましょう。 
 
 次項で紹介します。

三菱樹脂事件(最高裁昭48年12月12日)

この判例の事案

 三菱樹脂株式会社に採用されたAが、在学中の学生運動履歴について入社試験の際に虚偽の申告をしたという理由で、3ヶ月の試用期間終了時に本採用を拒否されました。
 
 そこで、Aは労働契約関係の存在の確認を求めて出訴しました。

この判例の論点

1)憲法は私人間の争いにも直接適用されるか?

 

《判旨》

 憲法の右各規定は、同法第三章のその他の自由権的基本権の保障規定と同じく、
国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、
 
 もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない・・・

 私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、一方が他方に優越し、事実上後者が前者の意思に服従せざるをえない場合があり、
 
 このような場合に私的自治の名の下に優位者の支配力を無制限に認めるときは、劣位者の自由や平等を著しく侵害または制限することとなるおそれがあることは否み難いが、
 
 そのためにこのような場合に限り憲法の基本権保障規定の適用ないしは類推適用を認めるべきであるとする見解もまた、採用することはできない。

 憲法の人権規定は、『直接』適用されるわけではないと判断

●【ポイント1】

 三菱樹脂事件の判例は、明確に直接適用説を否定しています。

2)では、私人間に憲法の人権規定は全く適用されないか?

 

《判旨》

 私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、
 
 その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によつてその是正を図ることが可能であるし、
 
 また、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、
 
 一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。

 つまり、私法の一般条項(民法90条とか)の解釈のときに、憲法の人権規定の趣旨を考慮して私人と私人の争いを解決しようね

 その限度で、憲法の人権規定は間接的には適用されるよと判断しています

●【ポイント1】

 三菱樹脂事件は、間接適用説を採用しました。 

3)企業は、特定の思想・信条を有する者の採用を拒否して良いか?

 

《判旨》

 企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、
 
 いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、
 
 企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。

 つまり、企業には契約自由の原則を享受し得るので、この原則に則って、思想・信条を理由として雇入れを拒否しても違法とまではいえない。

●【ポイント】

 まさにこの部分が、憲法の人権規定を間接適用しているところです。
 
 『あぁあてはめをしてるんだな』くらいで十分です。
 
 ポイントは、契約自由の原則を重視しているというところです。

終わりに

 
 憲法の判例は、結構難しいので、まずは通説の学説で基本となるものをしっかり学習して、それをベースに判例とどう違うのか?を意識すると判例を正確に勉強することができます。
 
 遠いようでこれが一番の近道です。

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最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

学鬼
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