行政書士試験の合格には『司法試験の問題集をやるべき』は嘘だ!
たまーに見かけます。
『行政書士試験に合格するためには、司法試験や司法書士試験などの問題集をやると合格できる』
という話。
行政書士試験も、そう難易度は高くないものの、同じ法律資格であることから、上のように言われることがあります。
つまり、同じ法律資格だから、行政書士試験の合格の可能性を高めるために、より難しい上位資格の問題集をやるというのです。
この対策は行政書士試験の合格できる対策として正しいのでしょうか?
司法試験や・司法書士試験の問題集はやんなくて可
ズバッと結論から申し上げると。
僕、個人としては、一定の場合を除いては、行政書士試験の対策として司法試験や司法書士試験の問題集をやる必要はないと考えています。
まぁ、これは僕の個人的な意見でもありますが、理由は違えど、同じような意見を主張されている方は多くいらっしゃるようです。
それは下記の理由から。
司法試験や司法書士試験の問題集をやる必要はないと思う理由
- 上位資格試験の問題集は量が膨大
- それぞれの試験では科目ごとにウエイトの置かれる出題範囲が厳密には異なる
- 行政書士試験に合格するために必要な知識と不要な知識が明確に区別できない
- 法律の勉強を初めて間もない場合、司法試験・司法書士試験の問題集の難しさで挫折する可能性が大きい
- 結局どの資格を取りたいのか目標を見失う恐れがある
上位資格試験の問題集は量が膨大
特に司法試験の問題集に言えることですが、もうね量が膨大なのですよ(笑)
どう考えても行政書士試験の問題集より一科目ごとの分量が多いです。
憲法だけとっても、出題可能性のある範囲は圧倒的に広いですし、その知識もより深いものが求められています。
『ちょっと有利かも』ていどの動機で取り掛かると半殺し確実です。
それぞれの試験では科目ごとにウエイトの置かれる出題範囲が厳密には異なる
中でも司法書士試験と行政書士試験の出題範囲の違いは、行政書士試験に合格に致命的となる場合はあります。
例えば、行政書士試験では、民法の家族・親族法は大きなウエイトが置かれている範囲ではありません。
これに対して、司法書士試験ではかなり細かい点まで暗記する必要があるようです。
このような違いは、行政書士試験の合格をかえって遠ざけるおそれがあります。
行政書士試験に合格するために必要な知識と不要な知識が明確に区別できない
同じ法律でも、行政書士試験で合格に必要とされている知識と、司法試験・司法書士試験の合格に必要とされている知識は違います。
もちろんかぶるところはあるでしょう。
でも、勉強すべき分量の違いを考えると、司法試験・司法書士試験の問題集には、行政書士試験の合格に不必要な知識も多数含まれることは明らかです。
ということは、行政書士試験の合格には必要のないとこまで、自然と勉強するはめになるということ。
余計なところに力を使うことになります。
『合格に必要なところだけ勉強する!』
これは短期合格に必要な原則ですが、上位資格の問題集をやることは、この原則に、完全に逆行してしまうことになります。
法律の勉強を初めて間もない場合、司法試験・司法書士試験の問題集の難しさで挫折する可能性が大きい
司法試験や司法書士試験のレベルになると、問題の解説を読むだけでも、慣れないうちは大変です。
法的思考力の基礎が必要ですし、法律独特の言い回しに慣れており、一定以上の文章の読解力が不可欠です。
普段からいわゆる『漢字の多い文章』『悪文ではなくとも難解な文章』に慣れる必要がありますから、かえって遠回りとなる可能性があります。
結局どの資格を取りたいのか目標を見失う恐れがある
他の資格の勉強をしていると、目標を見失うおそれがあります。
問題集を探すときや、情報を求めるときに必ず別の資格の情報が入ってきます。
得てしてそんな情報ほど魅力的なものが多い傾向にあありますから、行政書士資格を取得しようとした当初のやる気が低下しかねません。
司法試験・司法書士試験の問題集を解くのは爆弾を抱えることになりかねない
行政書士試験対策として上位資格の問題集を解く場合、どうしても上記のような爆弾を抱えることになります。
心配せず素直に行政書士試験をメインに対策を行っている教材を用いることが無難でしょう。
ただ、次項のような場合には、上位資格の問題集をやることも有効なことだと思います。
そこで、次項では例外について書いていこうと思います。
司法試験・司法書士試験の問題集をやると良いこともある
これまで書いてきた通り、行政書士試験に合格するためには、原則、素直に行政書士試験への対策問題集を利用しましょうという話でした。
でも、例外的な場合には司法試験・司法書士試験の問題集に取り組むことが良い場合もあります。
それは下記の通り。
上位資格試験の問題集に取り組むと良い場合
- 行政書士試験の教材を一通り終え、さらに法律系科目を完璧にしたい場合
- 将来的に、上位資格を取得したいと考えている場合
- 問題集ではなく、テキスト・参考書を辞書的に利用する場合
行政書士試験の教材を一通り終え、さらに法律系科目を完璧にしたい場合
1つ目の項目ですが、特に、憲法・民法・行政法では有効だと思います。
この3法はそもそも行政書士試験の問題集で原理原則を深く深く理解することはむずかしいです。
より応用力を磨くため取り組むと、法律科目は完璧に近いものになると思います。
行政書士試験用の問題集は、かなり解説があっさりしていますし、論理的に繋がらない解説もよく見かけます。
さらに法律科目の得点力をつけたい場合は、是非挑戦してみましょう。
上の3法に対して、商法(会社法)はやる必要はありません。
特に司法試験の問題集の場合、商法(会社法)は分量が民法ほどもありますので量が膨大すぎます。
行政書士試験を突破する限りではそこまで詳しい知識は求められておりませんので、やるだけ無駄です。
将来的に、上位資格を取得したいと考えている場合
この場合は、いきなり司法試験・司法書士試験の問題集から入っても良いと思います。
最近多いですが、司法試験の受験生や、ロースクールの学生が行政書士試験を受けています。
こういう方の場合は、行政書士試験の特別の対策をしていなくとも、余裕で合格できると思います。
上位資格の取得を考えている人は、いきなりこっちから入ってやる方が有利だと思います。
問題集ではなく、テキスト・参考書を辞書的に利用する場合
3つ目は、少しわかりにくいでしょうか。
司法試験・司法書士試験の問題集に、まんべんなく取り組んだ場合、行政書士試験に出ない問題も解くことになります。
これでは時間のロスが非常に大きいです。
忙しい社会人にとっては致命的になりかねません。
でも、司法試験や司法書士試験用の問題集ではなくて、それのテキスト・参考書(まぁ教科書ですね)を利用することは有益です。
司法試験や司法書士試験の参考書はかなり詳しく丁寧なものが多いです。
ですから、行政書士試験用のテキスト・参考書の解説ではよく理解ができない場合、その分からない点を調べるために『辞書』として利用するとかなりつかえます。
理解できないことは、ストレスです。
やる気・モチベーション維持のためにも、すぐに、じっくり調べることのできるテキスト・参考書はよい相棒になります。
また、独学で行政書士試験の勉強をされるような方の場合、勘違いをして法律論や判例を覚えてしまうことがあります。
このようなミスの修正にも使えますので、そう言う意味では、行政書士試験においても、司法試験・司法書士試験用のテキスト・参考書は利用価値があります。
僕は、司法試験用のテキスト・参考書を憲法・民法・行政法について使用していました。
よく調べたのを覚えています。
以上のような場合であれば、司法書士・司法試験に代表される難関資格試験対策用の教材も、強い味方として機能すると思います。
まとめ
いかがでしたか?
行政書士試験の勉強では『噂』が氾濫しています。
まぁ、利害関係の絡むところですから、しょうがないといえばしょうがないでしょう。
行政書士試験を経験した僕の感覚からすると、やはり司法試験や司法書士試験用の問題集を解くことは、時間の無駄だと思います。
(テキスト・参考書は使えます。)
司法試験や司法書士試験の問題集は本当に難しいですから、おそらく行政書士試験の合格レベルにある人でも、相当しんどいと思います。
噂に流されず、行政書士試験に合格されたいなら、それ専用の教材を使用しましょう。
これが原則だと思います。